はじめに
ALPS プロジェクトの一部として、量子格子モデルを、それが乗る格子とは切り離して共通の XML 形式で記述する必要があります。モデルの定義を格子から独立させておくことで、同じハミルトニアン(例えばハイゼンベルクモデル)をどんな格子上でもシミュレートでき、また同じシミュレーションアプリケーションでどんなモデルでも実行できるようになります。コードを変更する必要はありません。
このページでは、次のトピックを扱います。
デフォルトのモデルライブラリファイル
モデルライブラリファイルは、問題のヒルベルト空間とハミルトニアンを定義します。デフォルトのモデルライブラリは $ALPSPATH/lib/xml/models.xml にあり、よく使われる多くのモデルが含まれています。
| モデル名 | 利用可能なパラメータ一覧 | 備考 |
|---|---|---|
| spin(スピン) | J Jz Jxy J0 Jz0 Jxy0 J1 Jz1 Jxy1 h Gamma D K K0 K1 | 異方的(XXZ)交換相互作用。磁場、一イオン異方性、双二次項をオプションで追加可能 |
| boson Hubbard(ボーズ・ハバード) | mu t V U t0 t1 V0 V1 | |
| hardcore boson(ハードコアボソン) | 上と同じ | サイトの占有数を 0 または 1 に制限したボーズ・ハバードモデル。U → ∞ の極限に相当 |
| fermion Hubbard(フェルミオン・ハバード) | 上と同じ | スピンを持つフェルミオン。U は同一サイト上の逆スピン占有数どうしを結合する |
| spinless fermions(スピンレスフェルミオン) | mu t V t0 t1 V0 V1 | U は存在しない。2 つのスピンレスフェルミオンは同一サイトを占有できないため |
| Kondo lattice(近藤格子) | mu t J | 伝導電子(mu、t)が局在スピンと交換相互作用(J)で結合する |
| t-J | mu t J V t0 t1 t2 V0 V1 V2 J0 J1 J2 | 大きな U の極限におけるハバードモデルの有効低エネルギーモデル |
上記のパラメータは、それぞれ次の物理量に対応します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
mu | 化学ポテンシャル |
t、t0、t1、t2 | ホッピング振幅(サイトまたはボンドのタイプに依存) |
U | オンサイト相互作用 |
V、V0、V1、V2 | 最近接(ボンド)相互作用 |
J、J0、J1、J2 | 等方的交換相互作用、または t-J モデルにおける超交換相互作用 |
Jz、Jz0、Jz1 | 異方的(XXZ)交換相互作用のイジング(Sz·Sz)部分 |
Jxy、Jxy0、Jxy1 | 異方的交換相互作用の XY(横成分)部分 |
h | Sz に結合する一様な縦磁場 |
Gamma | Sx に結合する横磁場 |
D | (Sz)^2 に結合する一イオン異方性 |
K、K0、K1 | (Si·Sj)^2 に結合する双二次交換相互作用 |
これらのモデルは、それぞれ次の原論文で導入されました。ハイゼンベルク交換モデルは Heisenberg (1928)、ハバードモデルは Hubbard (1963)、ボーズ・ハバードモデルは Fisher et al. (1989)、近藤格子モデルは Doniach (1977)、t-J モデルは Anderson (1987) と Zhang and Rice (1988) によって導入されました。
モデルライブラリファイルの一般的な構造
モデルライブラリの典型的な構造は次のとおりです。
<MODEL>
<SITEBASIS name="..."> ... </SITEBASIS>
<BASIS name="..."> ... </BASIS>
<HAMILTONIAN name="..."> ... </HAMILTONIAN>
</MODEL>
<SITEBASIS> は単一サイトのヒルベルト空間(基底)を、<BASIS> は格子全体のヒルベルト空間を、<HAMILTONIAN> はハミルトニアンを定義します。
本セクションの他のページの概要については ALPS モデル定義 を参照してください。格子そのものの指定方法については 格子定義 を参照してください。ALPS ドキュメントの他のセクションについては 総合案内 を参照してください。