測定
系が平衡に達した後、エネルギー、磁化、さまざまな感受率などの物理量を測定できます。しかし、物理量を正確に測定するには、自己相関と独立なサンプルの生成について注意深く考慮する必要があります。自己相関とは、異なるモンテカルロステップで行った測定間の相関のことで、推定値の偏りや誤差の過小評価につながる可能性があります。独立なサンプルを生成することで、測定が統計的に意味のあるものになります。
物理量の自己相関
1. 自己相関関数
自己相関関数 は、ある量 について、時間間隔 (モンテカルロステップ単位)だけ離れた測定値どうしの相関を測ります。
ここで は、 ステップ離れた測定値の積の平均です。
2. 自己相関時間
自己相関時間 は、自己相関関数がどれだけ速く減衰するかを特徴づけます。これは次のように定義されます。
実際には、 を指数関数的減衰
にフィットすることで を推定します。
3. 自己相関の影響
自己相関は独立なサンプルの実効的な数を減らし、統計誤差の過小評価につながります。これを考慮するために、測定量 の誤差は次のように補正されます。
ここで は の分散、 は独立なサンプルの実効的な数です。
- は の分散であり、次のように定義されます。 ここで は測定値の 2 乗の平均、 は測定値の平均です。
- は独立なサンプルの実効的な数です。
独立なサンプルの生成
1. 測定間隔をあける
自己相関を減らすには、少なくとも自己相関時間 だけ間隔をあけて測定を行うべきです。これにより、連続する測定がほぼ独立になります。例えば であれば、10 モンテカルロステップごとに測定を行うべきです。
2. ブロッキング法
ブロッキング法は、測定値をブロックにまとめることで独立なサンプルを生成する手法です。各ブロックは自己相関時間よりも大きくする必要があります。各ブロックの平均を独立なサンプルとして扱い、これらのブロック平均の分散を用いて誤差を推定します。
3. パラレルテンパリング
ダイナミクスの遅い系では、独立なサンプルを生成するためにパラレルテンパリング(交換モンテカルロ法)を使うことができます。これは、異なる温度で複数のシミュレーションを実行し、それらの間で周期的に配置を交換するものです。この交換により、系は配置空間をより効率的に探索できるようになります。
物理量
以下に、イジングモデルの物理量の例をいくつか示します。モデルが異なれば、考慮すべき量も異なります。
磁化:
ここで はスピンの総数です。
エネルギー:
磁化率:
磁化率 は、外部磁場に対する系の磁化の応答を測ります。これは次のように定義されます。
ここで は平均磁化、 は外部磁場です。モンテカルロシミュレーションでは、 は磁化 のゆらぎから次の式を用いて計算されます。
ここで、
- は逆温度、
- はスピンの総数、
- は平均磁化、
- は磁化の 2 乗の平均です。
比熱:
比熱 は系の熱容量、すなわち温度を変化させるのにどれだけのエネルギーが必要かを測ります。これは次のように定義されます。
ここで は系の平均エネルギーです。
モンテカルロシミュレーションでは、 はエネルギー のゆらぎから次の式を用いて計算されます。
ここで、
- は逆温度、
- はスピンの総数、
- は平均エネルギー、
- はエネルギーの 2 乗の平均です。